2020年、新型コロナウイルス感染症の流行と共にテレワークが注目されました。
国や自治体も盛んに人流抑制によるテレワークの導入を訴えていましたが、実は感染症対策の為に2020年にぽっと出てきた単語でないのです。
実は2017年頃より政府が推進した「働き方改革」の一つにテレワークがうたわれていました。
そこから考えると既に先行で導入している企業からは遅れてしまっている感もありますが、令和元年度で導入企業は全体の20%(総務省通信利用動向調査による)と今からでも導入は遅くないですし、逆にテレワークから出社出勤に回帰してしまっている企業もあるので改めてテレワーク導入を検討してみましょう。
そもそもテレワークとは?
テレワークは日本テレワーク協会によると英語の「tele(離れた場所)」と「work(働く)」を組み合わせた造語で、ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)を活用した場所や時間に縛られない柔軟な働き方のことを指します。
一般的には在宅での仕事をイメージすることが多いかと思いますがそれ以外にも「モバイルワーク」、「サテライト/コワーキング」、「ワーケーション」と主に4種類があります。
モバイルワークは主に移動中の業務に関するものです。新幹線や飛行機等交通機関で移動中にできることは限られるかもしれませんがノートパソコンやスマートフォン等ツールを活用することで業務を行うことができます。また商談前の喫茶店での作業もモバイルワークに含みます。
就業者にすると仕事が増えるというイメージになってしまうかもしれませんが、残業を減らしたりと効率的に活動ができます。
サテライト/コワーキングは会員制で利用できるシェアオフィス、コワーキングスペースなど企業が就業場所と定めた場所以外での仕事をいいます。
(コワーキングスペースを企業が指定する場合もあります)
ワーケーションは近年注目されるようになってきたタイプですが、一般的なワーキングスペースではなく、リゾート地や避暑地などバケーションも楽しめる場所で行う仕事です。家族で一緒にいったりして夜や休日を家族サービスしつつ、勤務中もリフレッシュして仕事に望めます。
テレワークのメリット
国が導入をすすめていても現状義務というわけでもないのでメリットが見えなければ中々導入が進みません。
テレワーク導入のメリット、デメリットは何でしょうか。
企業によりケースバイケースかとは思いますが主に下記のようなものになります。
・働き方改革による経営改善
・生産性(パフォーマンス)の向上
・優秀な人材の確保
・固定費、変動費の削減
・事業継続計画(BCP=Business Continuity Plan)の対策
等
会社に出勤して仕事をする。
これが最も効率的とは限りません。
テレワークで時間を効率活用することによりパフォーマンスが向上したり、時間と空間という縛りがなくなるので多様な人材の確保につながり、経費の削減やにもつながります。
実際にコロナ以前の統計ですが、テレワーク導入目的とその効果の調査では8割以上が効果を実感しています。
出典総務省「令和元年通信利用動向調査」
またテレワークは企業だけでなく社会や就業者にメリットをもたらすこともポイントです。
テレワークが就業者に与えるメリット
・時間の有効活用
・人間関係等ストレスの軽減
・家族との時間が増えワークライフバランスの向上
・育児、介護休業の働き方の選択肢増加
テレワークが社会に与えるメリット
企業、就業者がメリットを得るということは両者を取り巻く社会全体にもメリットをもたらします。
・労働人口減少の緩和
・高齢者、障がい者、地方の雇用創出
・地域活性化
・環境負荷の軽減
等
テレワーク導入に向けてのポイント
テレワーク導入はITも絡んだ社内的なビジネスモデルの転換になります。
少人数、小規模な企業でしたら従来からコミュニケーションも取りやすいのでシステム改革やビジネスモデルの転換にも柔軟に対応しやすいですが、中規模な企業や歴史が長い企業ほどビジネスモデルの転換は図りにくいので計画的に進める必要があります。
1、テレワーク導入目的を明確にする
2、テレワークの対象範囲や期間を決定する
3、現状の社内制度やビジネスモデルを見直す
4、テレワークにあわせたセキュリティガイドラインを策定する
5、テレワークに必要なツールを検討導入する
6、社内意識の共有化
7、テレワークの実施と改善
1、テレワーク導入目的を明確にする
何事もそうですが初めに目的を明確にしておかないと導入が良かったのか悪かったのか、どういう風に改善すれば良いのかが見えてきません。
テレワーク導入は複数の視点が考えられるので御社において重視するポイントを目的としてあげ、定性的な指標だけでなく出来れば数値で計測できるような定量的指標を作りましょう。
例、・社員交通費や光熱費の削減
交通費50%削減、光熱費±10%削減
※テレワークによる補助との±
生産性の向上、従業員満足度ESの向上、離職率低下、採用率向上、事業継続計画(BCP=Business Continuity Plan)策定の一環
等
2、テレワークの対象範囲や期間を決定する
社内全体でテレワークが対応できたらよいですが、そうもいきません。
どうしても対応が難しい部署やメンバー、最低限必要な人数等があるので、テレワークの範囲を定めその中でローテーションさせるなど柔軟に対応しましょう。
また走り出したらずっとし続けないといけないものでもないので導入後1か月等、一定期間で一度見直しの機会を設けて改善していきましょう。
3、現状の社内制度やビジネスモデルを確認、見直す
常時使用する労働者が10人以上の職場には勤務時間の明記など就業規則の作成が義務付けられていますが、オフィスへの出勤を前提とした内容になっているかと思うので見直しが必要です。また、成果物での評価を重視した人事評価制度やそれに伴う給与体系等も見直しが必要になります。
4、テレワークにあわせたセキュリティガイドラインを策定する
見落としがちですが、セキュリティルールの確認、見直しと周知も必要です。
パソコンやスマートフォンなどツールに対するセキュリティを強化してもそれを扱う社員のセキュリティ意識が低ければ意味が無くなってしまいます。
例えば、喫茶店など不特定多数がいる中での仕事をする時、いくらシステム上強固なパスワードを設定していても誰にでも分かるように付箋にパスワードを書いてパソコンに貼り付けていたら意味がありません。
5、テレワークに必要なツールを検討導入する
ノートパソコンやネット環境は必須とも言えますが、その他にも導入することで生産性が向上するツールやサービスは多いので導入を検討しましょう。
・ビデオ会議システム(Zoom、GoogleMeet、Microsoft Teams 等)
・チャットツール(Google ハングアウト、Slack等)
・グループウェア(Microsoft365、Google Workspace等)
・オンラインストレージ(Google Drive、Dropbox、OneDrive等)
・リモートデスクトップ(Chrome リモート デスクトップ、TeamViewer等)
その他
タスク管理ツール、勤怠管理ツール、セキュリティソフト等。
無料やお試しで使えるものも多いですが機能制限やサポートの問題もあるのでまずは試してみて是非を判断しその後有料版を検討しましょう。
生産性向上やトータル的にプラスの効果をもたらす為に導入するテレワークですが、新しい試みの場合コストがかかってしまうことも事実です。
導入にあたっては補助金なども活用できる場合があるので確認してみましょう。
ワサビでは補助金活用もサポートしています。ご相談下さい。
IT導入補助金
東京テレワーク・マスター企業支援事業
テレワーク兵庫(リモート接続環境の提供)
働き方改革推進支援助成金(現在終了)等
6、社内意識の共有化
新しいツールの導入や評価制度の変更などテレワークに伴う環境変化は大きいです。
迅速に対応するにはトップダウンで進めていくことも必要ですが、ただ明日からテレワークをやって下さいと一方的に伝えるのでなく、実際にテレワークを行う人、行わない人、それらを評価する上司などミーティングや説明会を行うなどしてテレワークの目的や従来との違いについて意識の共有化を図ることは大切です。
出社して顔を突き合わしながら仕事をすすめるのと比べてテレワークではコミュニケーションが希薄になりがちで、業務評価も難しくなるので理解した上で対処する必要があります。
7、テレワークの実施と改善
まずはトライアルとして短期間実施してみましょう。
環境を整備しルールを作り計画通り実行できても、上手くいかなかったり改善点が色々見えてくるのでそこを改善していくことが大切です。
現在は新型コロナウイルスの影響でテレワークが必要とされていますが、この状況が収まった時にはもしかしたらテレワークをする必要が無くなるかもしれません。但し、そんな場合でも今回の経験は無駄にはならず、導入までの短期化や効率化など今後の危機管理の対策につながるはずですのでまだテレワークを導入していない企業は一度検討してみましょう。