先日、セミナーの動画撮影を担当させていただきました。
今回は特定のテーマについて複数の論者が意見を発表し、聴衆との質疑応答を行う研究討論会形式のイベントです。
撮影当日までの準備や当日の流れ、注意点を中心にご紹介します。
準備段階
1. 会場選び
撮影を前提に会場を選ぶ際、民間会議室は配線や設備が限られ不便な場合があります。公共ホールは音響や撮影に適した設計が多く、費用面でも有利な場合があります。こちらの会場は後方でも見やすいサブモニター付き。
2. 会場下見
会場機材の確認や電源配置を確認するため、可能であれば前日までに機材を持ち込み、動作チェックを行います。
3. 事前打ち合わせとリスク管理
主催者や会場と事前打ち合わせを行い、設営やテスト用に最低2時間の準備時間を確保します。会場予約が開始時間ギリギリの場合もあるため注意が必要です。また、遠距離移動時は災害や交通トラブルを考慮し、前泊を検討することも重要です。
当日の準備
1. 会場配置
- 参加者の席割: 参加者の席割を確認し、スクリーン近くの席には座らせない工夫が必要です。資料を配布しない、椅子をどけるなどで対応し、後方の視界も確保します。
2. 三脚、カメラ設置とテスト
まずはカメラ用の三脚を用意します。
今回バックアップも含めて主に4台のカメラを使用しました。
- メインカメラ(SONY-NX5R): 演者をアップで撮影し、寄り引き操作を行うカメラ。カメラ上部につけたガンマイクと演者演台に設置した無線のピンマイクで2種類の音声を収録できます。
- スクリーン専用カメラ(SONY-HDRーCX680): スライドを撮影するカメラ。
- 全景カメラ(SONY-HDRーCX680): 広角に会場全体を撮影するカメラ。
- バックアップカメラ(Canon XA75): 万が一のトラブル用。スクリーンを中心に全景を撮影するカメラ
三脚、カメラを会場後部に設置します。カメラ用の演台がある場合はカメラ用の演台を使用しますが、無い場合は会場に許可を頂き机を利用して後部に三脚を設置します。
実際に席に何人か座ってもらってカメラ範囲のチェックを行います。
スライドをスクリーンに投影する場合は実際に再生して投影範囲を確認します。
3. マイク設置、マイクテスト
- マイク: セミナーの場合は司会と演者がいることがあります。今回は演者が立ち代わりセッションするのでマイクホルダーにカメラ収音用のマイクをつけ、演者のマイクは会場用の有線マイクを使用しました。
有線マイクの後部にカメラ収音用のピンマイクを設置
バックアップ用の録音装置(ZOOM H1n)も含めた演者演台
- 録音装置: 司会の演壇に無指向で録音できるハイレゾ録音装置を設置しました。サブのカメラ機能もついており、口の動きと音声や映像をあわせる際の補助的な収音や魚眼映像として臨場感のある映像作成に活用します。
ハイレゾ録音装置はバッテリーを大きく消費するので延長ケーブルと電源も用意します。
- マイクテスト:会場の無線マイクと自社の無線マイクを使用する場合、混線の恐れがあるので事前に両方をオンにしてマイクテストすることが大切です。会場前方と後方での音の確認も行います。
4. 照明、スポットライトの確認
・スライドを使う場合、照明を一部落とすことになるので事前に照明チェックが必要です。その際にスポットライトがある場合は演者と司会者に光があたっているか実際に人を立たせての確認が重要です。
スポットライトの向きが異なる場合は会場に相談して脚立などを借りて向きを調整しましょう。
セミナー中に照明をつけたり、消したりすることも考えられる為、照明操作位置の確認と照明担当スタッフを決めておきます。
5. ブラインドの確認
窓にブラインドがある場合はブラインドの動きも確認します。
曇りの場合は気づかない場合もありますが、途中で日が差し外部光がミックスされてしまうとスクリーンの左右で色が変わってしまうこともあるのでブラインドは閉じておきます。
6. セミナー資料の確認
当日の配布物やプログラムを確認します。印刷されたスライド資料は編集の参考になります。司会者やスタッフと撮影の段取りを共有し、合図や間を調整することで映像や資料が切れないよう注意します。
7. 開始直前の確認
- 電源オン確認 長時間撮影ではバッテリー管理が重要です。AC電源を利用する場合は延長コードを確保します。バッテリーのみの場合は無駄な消費を避け、開始直前に電源をオンにすることを忘れないようにします。
会場に人が入ることにより撮影範囲が変わることもあるのでカメラの画角も再調整します。
パワーポイントの投影でノートパソコンを使用する場合はAC電源を忘れずに接続します。
撮影中の注意点
カメラ操作
合間、合間で問題ないかカメラチェックを行います。
寄り引き用のカメラでは話者にフォーカスして画角を調整するので講演の流れを把握しての予想や準備が必要です。
司会者と演者が左右に分かれている時はカメラを大きく横に振ることになるので、カメラ台数やスタッフに余裕があるのであれば司会者、演者専用のカメラを用意したり4kで広めに撮影して切り取ることもできます。
スライドとレーザーポインターの記録
スクリーンを撮影するカメラに加え、映像編集でインサートすると臨場感があり綺麗な仕上がりになります。レーザーポインターの動きを再現する場合は、パワーポイントのスライドショー録画機能を利用します。
事前に演者と打ち合わせが十分にできる場合はパワーポイントの録画操作を演者に全て任せてもよいですが、事前に打ち合わせが困難な場合や、万全を期したい場合は録画操作の代行を行うことも検討します。
その場合はオペレーターの席を演者の近くに確保します。
パワーポイントの録画をする場合、事前にデータを送ってもらい内容が問題ないか確認します。
画像などを使う場合、著作権に絡む問題もあるので事前に演者に確認します。
撤収作業とデータ管理
1. 撤収作業
撤収作業は短時間で済みますが、会場利用時間内に収めるため、プログラムには30分程度の余裕を持たせるべきです。プログラムが押す場合に備え、休憩時間で調整し、主催者には時間厳守を依頼します。
2. データバックアップ
撮影データは慎重な管理が重要です。撮影後は早めにSDカードからパソコンや別のSDカードに複数バックアップを取り、データ消失のリスクを最小限に抑えます。
まとめ
セミナー撮影の流れや注意点をご紹介させて頂きました。
ロケでの撮影や緊急での記者会見などと異なり、セミナー撮影はある程度流れが決まっているのである程度の経験豊富な業者に依頼すれば一定のクオリティは期待できます。ただし、撮影目的の確認は重要になってきます。
単なる内部向けの記録用なのか、外部発信用なのか、外部発信した上で何かの成果を得ることを目的にするのかによって、リスク管理や必要とするカメラ台数、スタッフ数、編集方法などが異なり費用なども変わってきます。
相見積もりを取って選んだけれども思っていたのと違うとならないようにしましょう。
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