1年ぶりのものづくり補助金 19次公募

3大補助金と呼ばれる「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」の内の一つ「ものづくり補助金 19次」の公募が先日公開されました。
前回18次公募より1年空いたので待ち望んだ方も多いかと思います。概要とポイントをご紹介しますので条件に合致する場合は積極的に利用を検討してみましょう。

目次

ものづくり補助金とは

ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業や小規模事業者が、今後の制度変更に対応しながら生産性を高めるための支援制度です。新しい製品やサービスの開発、海外展開などに必要な設備投資の費用を一部補助し、事業の成長を後押しします。これにより、中小企業の競争力を高め、経済の活性化を目指しています。

ものづくり補助金は小規模事業者持続化補助金よりも補助額が大きい為、用途が広く大規模に取り組めますが下限額も設定されている為(100万円)ある程度の持ち出しが必要になります。
補助金の基本は最初は全額持ち出し、事業完了後数カ月たって入金となります。
補助金収入は法人税上益金となりますが、設備投資は減価償却となる為、長期的に財務スケジュールを考えることが重要です。

どんなことに使える?

例えば、喫茶店でコーヒーを提供しているような企業であれば下記のようなことも対象の可能性があります。

〇最新の焙煎機の導入による品質向上
従来の焙煎機よりも温度や時間を精密に管理できる最新の焙煎機を導入することで、豆の個性を最大限に引き出し、均一な品質のコーヒーを提供できるようになる。
また、省エネ型の焙煎機を導入すれば、光熱費の削減や環境負荷の低減にもつながる。
このことは生産性向上につながります。

※単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象事業に該当しないため、そこに関して事業計画書等で言及していく必要があります。

〇オンライン販売システムの構築
ECサイトを立ち上げ、顧客が焙煎度や豆の種類を選べるカスタマイズ注文システムを導入。さらに、顧客データを分析し、定期購入プランやリピーター向けのプロモーションを自動化することで、売上アップや業務効率化を実現。

※ものづくり補助金の「システム構築費」には、ECサイト構築やホームページ作成は基本的に含まれません。
生産性向上や新製品・新サービス開発のための設備投資を支援する制度の為、「販促・広告」の要素が強い単なるECサイト構築やホームページ作成は難しいですが業務効率化や生産性向上に直結するシステム の一部として説明ができる場合は対象になる可能性もあります。
(グローバル枠では広報も対象)

対象企業

この補助金に応募できるのは、NPO法人や商工組合などの法人、特定の個人事業主も含んだ日本国内に本社や事業所を持つ中小企業などです。製造業だけでなく、卸売業、小売業、サービス業など、さまざまな業種の中小企業や小規模事業者が対象となります。

「ものづくり」という名称がつくので勘違いされてしまいますが、システム開発やサービスの新規開発など、製造業以外の事業者も申請できます。

補助率、補助額

2種類の補助事業枠があります

A)製品・サービス高付加価値化枠

革新的な新製品・新サービス開発※の取り組みに必要な設備・システム投資等を支援。

革新的な新製品・新サービス開発とは、顧客等に新たな価値を提供することを目的に、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発することで、単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象事業に該当しません。

補助上限額

従業員数に応じて750万円~2500万円

補助率

中小企業1/2、小規模企業・小規模事業者及び再生事業者2/3

補助対象経費

機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費

B)グローバル枠

海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資等を支援

補助上限額

3,000万円

補助率

中小企業1/2、小規模企業・小規模事業者2/3

補助対象経費

製品・サービス高付加価値化枠と共通+(グローバル枠のうち、海外市場開拓(輸出)に関する事業のみ)海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費

その他)

賃上げに関わる特例措置として上限額の引き上げ(100万円~1000万円)と補助率引上げ(1/2→2/3)があります。

審査項目と加点ポイント

補助金申請は多大な労力を必要としますが助成金とは異なる特徴があります。
条件に適合し、必要資料を揃えたら基本的に受給することが可能な助成金と異なり、補助金の場合は事業計画などに対する審査があります。
また予算枠などもあるので、例え素晴らしい事業計画ができたとしても相対評価として他社の事業計画のポイントが高かった場合は不採択となってしまいます。

事業計画書のレベルが同じ場合は加点ポイントや減点ポイントが採択に響いてくるかもしれませんので主な点をご紹介します。
詳細は公募要領をご確認下さい。公募要領のバージョンによって内容が異なる場合がございます。

パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点【ハードル 中】

「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにおいて宣言を公表している事業者。(応募締切日時点)

パートナーシップ構築宣言は、企業間の取引適正化や共存共栄を目的とした経済産業省の取り組みです。
特に、大企業が中小企業・小規模事業者と連携し、取引価格の適正化や生産性向上、共通価値の創出を進めることを重視しています。

内容的には下請法の対象となる資本金1000万円を超える事業者が対象のような形ですが、中小企業や小規模事業者でも企業間の取引の適正化や、サプライチェーン全体の生産性向上に賛同する意志を示すことで宣言は可能なようなので自社の取組を発信しましょう。

但し取引適正化や生産性向上の具体的な取り組みを記載する必要があり、ポータルサイトにも掲載されますので熟慮が必要です。

健康経営優良法人に認定された事業者に対する加点【ハードル 高】

健康経営優良法人2025に認定されていること。(3月頃認定予定)

申請期間が1年に1回と限定されており、審査料が必要です。
審査にも半年ほどかかり新規で申請するには今回の補助金は対象外となってしまいます。

参考:健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト

大幅な賃上げ、事業場内最低賃金引上げ事業者に対する加点 【ハードル 低】

補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、従業員及び役員の給与支給総額の年平均成長率を4.0%以上増加、並びに事業所内最低賃金を毎年3月、地域別最低賃金より+40円以上の水準を満たす目標値を設定し、設定した目標値を交付決定までに全ての従業員又は従業員代表者、役員に対して表明している事業者。

証拠書類を用意する必要がありますが、今後の取組に対する目標設定なので申請ハードル自体は高くありません。
但し人件費等の経営的な負担などは上がる為今後の事業計画を見据える必要があります。
また、加点要件が未達になったしまった場合は今後の補助金に対する大幅な減点材料になってしまいます。

えるぼし、くるみん認定に対する加点 【ハードル 中】

・えるぼし認定、くるみん認定を取得している事業者

技術情報管理認証制度の認証を取得している事業者に対する加点 【ハードル 高】

技術情報管理認証制度の認証を取得していること。(応募締切日時点)
参考:経済産業省「技術情報管理認証制度」

数十万円の費用と様々な対策が必要になってくるため補助金の加点目的にするにはハードルが高いものになります。

成長加速マッチングサービスに登録している事業者に対する加点 【ハードル 低】

成長加速マッチングサービス」において会員登録を行い、挑戦課題を登録している事業者

現時点でまだ公開前のポータルサイトです。
申請式の登録となっており、事業再構築補助金以外にも今後の補助金の加点対象になることも考えられる為、
外部組織とのつながりに抵抗がない場合は登録してみましょう。

経営革新計画 【ハードル 高】

申請締切日時点で有効な「経営革新計画」の承認を取得している事業者。

DX認定 【ハードル 中】

申請締切日時点で有効な「DX認定」を取得している事業者。

J-Startup J-Startup地域版認定 【ハードル 高】

J-Startup」、「J-Startup地域版」に認定された事業者。

事業継続力強化計画/連携事業継続力強化計画 【ハードル 中】

申請締切日時点で有効な「(連携)事業継続力強化計画」を取得している事業者

被用者保険 【ハードル 低】

従業員規模50名以下の中小企業が被用者保険の任意適用(短時間労働者を被用者保険に加入させること)に取り組む場合。

減点ポイント

・ものづくり補助金過去3年間に交付決定を受けている事業者

・過去のものづくり補助金で交付決定をうけたが、給与支給総額増加要件、最低賃金水準要件の基本要件を達成できなかった事業者

・加点項目要件未達事業者

中小企業庁が所管する補助金において、賃上げに関する加点を受けたうえで採択されたにもかかわらず、申請した加点項目要件を達成できなかった場合は、事業化状況報告において未達が報告されてから18か月の間、中小企業庁が所管する補助金への申請にあたっては、正当な理由が認められない限り大幅に減点。

スケジュール

申請受付開始:2025年4月11日(金)17:00~

申請締切:2025年4月25日(金)17:00 必着

採択結果発表:2025年7月下旬(予定)

まとめ

近年はものづくり補助金の実施頻度が下がっている為、条件に合致する場合は積極的に利用を検討するのが良いかと思います。採択を狙うには事業計画内容も大切ですが、他社に抜きんでるには加点申請も検討してみましょう。
但し、採択されるためにも無理して色々な加点項目を狙う必要があるかというとそうとも限りません。
特に賃金に関する加点項目は申請ハードルとしては高くありませんが、それで採択された場合、人件費負担が今後の経営計画に大きな影響を及ぼす場合があります。
また賃金以外にも加点要件を達成できなかった場合、今後他の補助金(IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金、新事業進出補助金 等)を申請する際に大幅な減点項目となってしまうので慎重な検討が必要になります。

小規模事業者持続化補助金とは異なり、ものづくり補助金は採択と交付決定、2段階のハードルがある為採択が通っても交付決定で更なる労力が時間がかかる場合があります。
補助金申請のサポートを外部に依頼する場合には採択後のサポート体制についても確認しましょう。

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