先日生成AIを組み込んだECサイトの構築ができないかという相談を受けました。
具体的にはECサイト内でユーザー自身がテキストベースで指示を出したイメージをAIが画像化してそれをある販売商品のデザインに利用するというものです。
弊社はデザインやホームページ制作の会社なのでお客様から頂いたイメージを形にすることは得意とするところですが、それをユーザー自身が生成AIを活用してできるように付加価値をつけるという相談です。
結論としてはこのようなECサイトの構築は可能ですが、コストバランスの検討や、集客戦略の構築などマーケティングの問題、著作権の問題などを検討する必要があります。
生成aiを組み込んだウェブサイト
生成aiをサービスに活用したウェブサイトがないか調べてみました。
参考にいくつかご紹介します。
→オリジナルグッズを作成・販売できるECプラットフォーム。
画像生成AI(Stable Diffusion) を活用した「AIアシスト機能」を提供しユーザーがテキストを入力すると、AIがデザイン画像を生成し、Tシャツやスマホケースに適用可能。
この機能は、iOSアプリ限定の機能です。イラストを生成できるのは、1アカウントにつき1日10回まで。
→顔写真を解析し、AIが似合う眼鏡フレームを提案してくれてバーチャル試着ができます。
眼鏡を購入してもらうことが目的なので機能自体は無料で提供されています。
→ テキストを入力するとAIが商用利用可能な画像を生成してくれます。
素材画像の販売サイトのサービスです。素材サイトからイメージ画像を探すのもイメージにしっくりと合うものが無くて中々大変ですが、AIで指示することによりイメージ通りのものが生成できます。
月100回までの利用(1回につき4枚の画像が生成)で1100円
→AIがユーザーのイメージからオリジナルLINEスタンプを作成します。
LINEクリエイターズマーケットの規定に基づき、売上がクリエイターとLINEで按分されます。
生成ai組み込みにあたって必要な作業
今回のご相談を実現するには主に下記の作業が必要になりますが、それぞれ開発費や利用料金などが発生します。
機能 | 技術・ツール |
① ユーザーがテキストで指示を出すフォーム | HTML / JavaScript(例: React, Vue.js) |
② AIが指示を受け取り画像を生成 | OpenAI API(DALL-E)、Stable Diffusion、Midjourney など |
③ 生成された画像を商品デザインに適用 | 画像編集API(例:Canva API, Figma API,ImageMagickなど) |
④ ユーザーがデザインを確定し購入 | ECプラットフォーム(例:Shopify, WooCommerce, BASE など) |
⑤ 決済 | Stripe, PayPal, など |
画像生成AIの利用料金
OpenAI「DALL-EAPI」(ChatGPTの画像生成AI)の場合
1024x1024px の画像1枚あたり $0.04(約6円)
高画質の場合$0.08(約12円)
OpenAIのポリシーに準拠している為商用利用が可能です。
参考:https://openai.com/ja-JP/chatgpt/pricing/
参考:DALL E
参考価格は為替レートやサービス変更により変動する場合がございます。
主な課題
ECサイトでユーザー自身が作成した画像を商品に適用して販売するサービスを実現するにあたっては色々な課題を解決していく必要があります。
- 画像生成AIの利用条件
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画像生成AIの利用単価は安いですが従量課金制なのでユーザー自身に生成を任せると費用が無制限に増えてしまう恐れ。生成画像の品質がユーザーの期待に沿わない場合、画像生成だけされて発注されない場合の対応策が必要。
- 著作権上の問題点
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生成AIによる画像の著作権帰属が現行法で明確でない点が議論されており、ユーザー自身での作成を前提としている場合でも著作権上の問題が発生する可能性をはらむ。
ユーザー自身の自己責任としてもプラットフォーム提供企業の責任が問われる。 - ECサイトとのシステム統合
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生成AI → 商品デザイン適用 → カート追加 → 注文 という複数のプロセスをスムーズに連携させる必要がありますが、画像のアップロードや適用の処理が遅いと、ユーザー体験が悪化してしまいます。
仕様の策定から導入テスト、実装まで多くの期間と費用がかかります。
仕様を策定しないと概算の御見積も難しいため、まずは試しに生成AIに概算費用を相談してみたところ簡易的な小規模サイトでも少なくとも
100万円(初期費用)
20万円~(運用コスト)
商業ベースではそれの5倍ほどは費用がかかるとのことです。
まとめ
生成AIが広く知られるきっかけとなったChatGPT(GPT-3.5)が登場したのは2022年11月末。それから3年も経たないうちに、生成AIは急速に進化し、それを活用したさまざまなサービスが誕生しています。
今回検討しているECサイトも課題はあるものの、それらを解決しながら進めていけば、生成AIを活用した新たなサービスの一つとして市場に広まる可能性があります。
ただし、ECサイトでの商品販売が主目的であり、オリジナル画像の活用が付加価値となる場合は、いきなりAI画像生成を組み込むのではなく、外部の生成AIツール(例、Canva等)の利用を案内したり、デザイナーによる対応を併用するといった段階的な導入も選択肢の一つとなるでしょう。
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